過熱する「ゲーム市場の競争」と活気づくソフト業界

「Wiiの任天堂」対「PS3のソニー」の勝負は、現時点では任天堂の圧勝
のように思えます。しかし、今後はソニーの巻き返しも予想されます。

ソニーが巻き返しを予想する根拠の1つが、「経営陣の刷新」が発表されたこ
とです。特に注目すべきは、実質的なプレステの産みの親、久多良木氏の処遇
です。ソニーの中鉢良治社長は「久多良木健氏ら2人による体制を、新社長の
平井一夫氏らを含む4枚看板に増やして経営を強化する」として、久多良木体
制の変更を発表したのです。
振り返ってみると、カリスマ経営者と呼ばれた出井元社長が更迭され、同社初
の外国人社長ハワード・ストリンガー氏が就任してからは、復活期待から株価
は堅調に推移しました。

05年末時点での世界累計販売台数をみると、ソニーの「プレイステーション2
(PS2)」が8,000万台超で独り勝ちの状態です。ソニーは今でこそPS3
の量産につまずき初回出荷が10万台と鈍いスタートとなっていますが、「ゲー
ム機としての性能」では、PS3がWiiを大きく上回っていると広く認識さ
れています。PS3がこのまま不調に終わるとは考えられません。

また、日本ではほとんど存在感がないマイクロソフト「Xbox」は、実は北
米と欧州では任天堂「ゲームキューブ」を上回っています。Xboxは欧米で
人気のスポーツやレース、戦争ゲームなど、高画質を生かしたリアルな描写が
強みなだけでなく、次世代機「Xbox360」を他社に1年先駆けて発売し
たスピード感から、欧米中心に売り上げを伸ばしています。

そして何より、ゲーム機の売上を左右するのはソフトです。人気ソフトがある
かどうかがゲーム機の売れ行きのカギとなります。機能では勝っていたPSP
がゲームボーイアドバンスに勝てなかったのも、ポケットモンスターのような、
絶対的な人気を持つソフトがなかったから、ともいえます。

ソフト業界ではここ数年、ゲーム機の性能が高まり、それに対応したソフトを
制作するために、多額のコスト、そして長期にわたる制作期間が必要となりま
した。それによってソフト業界の収益が圧迫される状況が続いていました。

しかし、ここに来てハードの競争激化でゲーム業界が盛り上がり、ソフト業界
も活気づいています。たとえば「ニンテンドーDS」向けソフト「ファイナル
ファンタジー III」の売上が好調なスクウェア・エニックス(9684)は、経
常利益を前年同期比で 269.1%増となる91億6900万円と予想しています。

Xbox360向けソフトが欧米で好調なカプコンも株価は堅調推移していま
す。一方で、PS3発売延期の影響を受け、PS向けソフトに力を入れるコーエー
(9654)やバンダイナムコホールディングス(7832)の株価が低迷するなど、
業界内でも格差が見え始めています。

新ゲーム機の発売で活気づくゲーム業界ですが、投資という観点からは、「材
料出尽くし」という問題に注意しなければなりません。これは、ゲーム業界に
限らず、投資全般に言えることです。

今年、悪いニュースが多く飛び出す中で、数少ない良いニュースだったのが
「新型ゲーム機発売」です。しかし、実際に良いニュースが明らかになり、状
況がはっきりしてくると、今度は逆に「材料出尽くし」ということで株価が軟
調になるケースがまま見受けられます。

また、Wiiに関しては、アメリカでリモコンのストラップが切れて壁にぶつ
かるなどの“事故”が起きており、任天堂が損害賠償を求められる可能性もあ
る、との報道もありました。
(現在購入できるWiiリモコンにはシリコンで出来たWiiリモコンジャケットの
同梱は標準となっています)

投資に過信は禁物です。好材料にみんなが飛びついている時こそ、何をきっか
けに株価が下落するか分かりません。現在の任天堂のように、好材料が出続け
ている時は、様子見期間に入ったと考え、余裕を持ち今後の投資行動を検討し
たほうが良いのではないでしょうか。