単純ではない株価と材料の関係

関係があるとはいえ「ディープが勝てば図研の株価は上がる」といった単純な
ものではありません。

05年5月29日に開催された中央競馬3歳牡馬の日本一を決める日本ダービーで、
ディープインパクトは歴代トップの1.1倍の圧倒的人気に応え、皐月賞に続く
2冠を達成しました。

その翌日の図研の株価は、日経平均が前週末比0.7%の上昇にとどまったのに
対し、5.2%と大きく上昇しました。

一方で、10月の菊花賞でナリタブライアン以来11年ぶり、無敗ではシンボリル
ドルフ以来21年ぶりとなる3冠を達成した翌日の図研株は、日経平均が前週末
比0.7%の下落に対し、5.1%も下げました。

「無敗での3冠達成」というめでたいニュースがあったなら、普通は株価は上
がると考えられます。しかし、実際は下がりました。これが株の難しいところ
です。

この場合、日本ダービーでの勝利までは、期待先行で株価が上昇したものの、
菊花賞の勝利、そして3冠達成でその期待が実現したため、「材料出尽くし」
となり、株価が下がったと考えられます。

株の世界に「噂で買ってニュースで売る」という格言があります。これはニュー
スとして世に広く知られたときには、その材料はすでに株価に織り込まれて
いることが多く、儲けを出すためには、その前の噂の段階で買いを入れなけれ
ばならないということです。

株価の推移でみると、噂の段階ではどんどん上昇しても、その噂が確定したと
ころ、つまりニュースとして広く知られた時点が天井となり、その後は下落し
ていきます。


相場格言には含蓄のあるものが多くあります。「先人の知恵」として、自分の
投資に役立ててみてはいかがでしょう。例えば、「売りは早かれ、買いは遅か
れ」という格言。もちろん、投資にはタイミングが必要です。スピーディーに
動くことが大きな儲けをもたらすこともあります。しかし、なんとなく周りの
雰囲気に流されて買ってはみたが大損などということも往々にしてあります。
投資をするなら、自分はその会社に投資すべきなのか、本当にこの会社は投資
に値する会社なのか。そういった点をじっくり考えることも大切でしょう。


ディープインパクトと図研の場合、菊花賞までが「噂」の段階。3冠を達成し
た時点で、下落となったわけです。

投資の世界に「たられば」は禁物ですが、もし今回の凱旋門賞でディープイン
パクトが勝っていたら図研の株価はどう動いたのでしょう。私は菊花賞のとき
と同様、下がっていたのではないかと思います。

図研の株価の推移をご覧ください。

9月中旬ごろから大きく上昇しているのが分かります。9月20日の終値は1099
円ですが、凱旋門賞前には1216円となっています。これは、イギリスのブック
メーカーのオッズでディープインパクトが1番人気になるなど、優勝への期待
が高まっていた時期です。

ここまでが「噂」。もしその期待に応え優勝していたとしても、月曜の株価は
「材料出尽くし」で下がっていたのではないでしょうか。

株価の増減・判断材料はいろんなところに眠っています!

株価の増減・判断材料はいろんなところに眠っています!
何がブームになっているか何が株価材料となるか、ということに関して世間の
動きに関心を持ちましょう。

一例を挙げると、誉高い3冠馬”ディープインパクト”の動きひとつでも株価
は大きく動きます。

2006年10月2日、ある会社の株が寄り付きから売り気配で始まり、結局、前週
末比で3%以上下げる1779円で取引を終えました。日経平均が4日連続で続伸
し、9月6日以来の1万6200円台回復するという堅調な地合の中でのことです。

その会社とは、ほとんどすべての電子機器に使われている電子部品であるプリ
ント基板用CAD/CAMシステム開発・販売の大手の図研(6947)です。業績見通
しの下方修正など、本業にかかわるマイナス材料が出たわけではありません。

下げの原因として考えられるのは、現地時間1日にフランスで行われた世界最
強馬を決める凱旋門賞(仏G1、2400m)の結果です。

このレースに“日本最強馬”ディープインパクトが出場していました。

ディープインパクトは、05年の皐月賞、日本ダービー、菊花賞に勝利し、21年
ぶりに無敗でのクラシック3冠を達成した驚異的な競走馬です。

ディープインパクトは、凱旋門賞で「欧州最強馬」と呼ばれるハリケーンラン
など強豪がそろう中、単勝1.1倍の圧倒的1番人気でした。しかし結果は、直
線で本来の切れ味を発揮することができず、優勝をレイルリンク(牡3・仏)
にさらわれ、牝馬のプライド(牝6・仏)にも差し切られ3着に終わりました。

2日朝の情報番組は、軒並み凱旋門賞について取り上げていたので、ご覧になっ
た方も多いのではないでしょうか。NHKの生中継も、深夜としては異例の高
視聴率(関東で平均16.4%)を記録。普段は競馬に興味のない人も注目してい
たことがうかがい知れます。

ではなぜ、「ディープ、凱旋門賞敗退」のニュースが、図研の株価と関係する
のでしょう。それは、ディープインパクトの馬主が、図研の社長である金子真
人氏だったためです。

とはいえ、ディープインパクトの馬主は、金子真人ホールディングス株式会社
という図研とは資本関係のない、金子氏個人が設立した会社です。その馬のレー
ス結果が、図研という東証一部上場企業の株価に本当に影響を与えるのか?こ
じ付けではないのか?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、これまでのディープインパクトの戦績と図研の株価を見ていくと、そ
の間に深い関係があることが分かります。